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選挙改革フォーラム  世界の選挙と暮らし VOL.8 (申込者用)

​ドイツにおける政治教育と選挙制度と日本 ③

2024年11月22日​ 飯田橋・東京ボランティア・市民活動センター

① 基調講演 近藤孝弘氏(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)

 「ドイツにおける政治教育の挑戦―自由民主主義体制の維持・発展のために」

② 報告 古野香織氏(足立区選挙管理委員・認定NPO法人職員)

 「若者の低投票率を乗り越えるには? 日本における主権者教育、選挙啓発の取り組みについて」​

③ 質疑応答

  近藤孝弘氏(早稲田大学教授 教育・総合科学学術院 教授)

  古野香織氏(NPO法人職員、足立区選挙管理委員)

※​動画や資料の複製や転載はしないようにお願いします。

美しい城
 Zoom参加者からの質問への回答(追加分) 
※近藤先生への質問で時間がなく回答できなかったものに、回答していただきました。

Q1> 2022年度から日本の高等学校では「公共」という科目が導入されています。そのことで日本の政治教育は改善されてきたのでしょうか。
オーストラリアのように義務投票制にし、しかも投票所に屋台を出すようにすれば、投票率は劇的に向上するのではないでしょうか。以下、NHKの記事です。

 ソーセージと選挙 おいしい関係 | 特集記事 | NHK政治マガジン
 https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/19968.html

A1(近藤)>

「公共」という新科目については,以前の「現代社会」と比較するとき道徳的な側面が強くなっており,それを政治教育の観点から改善されたと考えるか否かは評価の分かれるところです。つまり,(道徳教育,キャリア教育,政治的教養の教育を統合した)シティズンシップ教育という点から見れば,それは改善と見ることもできますが,政治教育の視点からは後退とは言わないまでも,大きな進歩はないということになります。私は,「現代社会」には現実の政治問題を扱う姿勢に弱さがあったとはいえ,その点を改善する方が良かったのではないかと考えています。

Q2> 近藤先生に質問です。ドイツのボイテルスバッハ・コンセンサスやイギリスのクリック・レポートのように、日本における主権者教育の考え方に大きな影響を与えているようなものはありますか?
また、ドイツではボイテルスバッハ・コンセンサスをもとに、政治教育を行なっているにもかかわらず、なぜ、これらの教育とは、相対するような思想が旧東ドイツ地域を中心に広がっているのでしょうか?

A2(近藤)>

まず日本の主権者教育に,ボイテルスバッハ・コンセンサスやクリック・レポートに匹敵するようなものがあるかと言われれば,特に思いつくものはありません。ただ,特に選挙に関する啓発活動には長い歴史があり,そうした活動や歴史の意義は意識していた方が良いと私は考えています。
次に東ドイツ地域の状況については,まず(政治)教育にできることは限られているということを確認する必要があろうかと思います。敢えて言えば,人々の意識を反映した教育(政策)は比較的よく機能しますが,そうでない教育は機能しにくいのではないでしょうか。
東ドイツ地域においては,単に西との経済格差のためだけでなく,そもそも歴史的に自由民主主義の社会的基盤が脆弱で,(社会主義政権の政策の結果として)西ドイツの自由民主主義を支えたナチズムへの反省の意識が弱く,また統一前後以降は(ソ連の傀儡国家としての)社会主義体制を打倒するに至った民族主義的な民主主義が高揚する状況が続いたことなどが,右翼急進主義が拡大しやすい状況をもたらしたものと考えられます。そうした状況下では,むしろ自由民主主義的な政治教育の方が,人々の感覚や感情に反するものとして敵視されてしまうという面が出てきているというのが実情かと思います。

Q3> イスラエルによるパレスチナ人虐殺が続き、国際法違反を続けていることに対するドイツの姿勢について。

ドイツがナチス時代の反省をもとに、イスラエルに盲目的な肯定を行っているように見え、危惧を覚えます。

これについてはどう思われますか?

A3(近藤)>

イスラエルの安全はドイツにとって本質的な課題であるというのが従来のドイツ政府の立場で,ここにホロコーストへの反省が作用しているのは疑う余地がありません。おそらく多くのドイツ市民にとって,イスラエルの問題は,歴史的な関係ゆえにドイツにできることは少なく,他の諸国に解決に向けて頑張ってほしいものなのではないでしょうか。

また敢えて付け加えれば,イスラエルへの支援を続ける政府を批判する人々の中には,いわゆるイスラム原理主義やプーチンを支持する(あるいは自由民主主義を否定する)ような集団が含まれていることも,世論の大きな変化を押しとどめているように思われます。この点でも,やはりガザの問題は,いまのドイツにとって対応できる能力の範囲を超えた課題ということになりそうです。

最後に,政治教育においては,現状に到る経緯の正確な理解が,まずは期待されているようです。その上で,個々の学習者がどのような意見を持つかは,各自に委ねられるということになります。

【参考文献】 近藤孝弘先生の著書「ドイツの政治教育」(岩波書店刊)に質問にかかわる参考記述がございます。

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「ドイツにおける政治教育と選挙制度と日本」

 11月22日(金) 18:30~20:30(開場18時15分)​

■基調講演 近藤孝弘氏(早稲田大学教授)

 「ドイツにおける政治教育の挑戦―自由民主主義体制の維持・発展のために」

■報告 古野香織氏(足立区選挙管理委員・認定NPO法人職員)

「若者の低投票率を乗り越えるには? 日本における主権者教育、選挙啓発の取り組みについて」

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「たかまつななのSocial Action!」で、ドイツの政治教育センターが紹介されています。参考までにご覧ください。

​SNSや「フェークニュース」の課題なども語られています。

今回は”政治教育の先進国”とも言われているドイツへ行き、ドイツ連邦政治教育センターという政府機関を取材しました。 年間の予算が156億円もあるというこちらの組織。果たしてどんな活動をしているのか、そして政治的中立性をどのように保っているのかに迫ります。

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